はじめに
みなさんこんにちは!VESS LabsでWeb5.0 Researcherとして活動しているMintです。
前回のWeekly DID it!では「DIDのきほんのき」をテーマに、DIDやVCとは何か?についてご紹介しました。今回の記事では「DID・VCの活用事例」をテーマに、DIDやVCがどのように世の中の役に立っているのか? をご紹介します。
技術的には何となく分かったけれど、実際にどう使われるものなのか想像つかない! という方におススメの記事です。世界各国で進められている実証実験や実運用の事例から一緒に学びましょう!
(※DID・VCを活用したサービスについては別の記事でご紹介しますので乞うご期待!)
世界各国のDID・VC活用事例
01. 慶應義塾大学
● 国: 日本
● 業種: 教育機関
● 概要: 東京に6つの主要キャンパス、10の学部、14の大学院を擁する日本最大級の大学
課題
1. 授業成績証明書と卒業証明書が紙ベースで管理されていた。例えば学生が就職活動をする際には、成績証明書のコピーを紙で取得する必要があった。
2. 学生が卒業してからも学校のメールアドレスでシステムにアクセスできるように、情報システム部門が何十年にもわたってメーリングリストを管理する必要性があった。
解決方法 = "DIDテクノロジを使って検証可能な資格情報を保存"
学生のオンライン ID は、属性を持った特定のコレクションで構成されます。学校側は、DID 内の一意の識別子を使用してこれらの属性を追跡でき、学生の検証可能な資格情報を保護できます。学生は、検証可能な資格情報を自分のスマホに保存することで、情報の提示が必要な際にも簡単にIDの証明ができるようになりました。
結果
約1,500人の学生がパイロットプログラムに参加し実証実験が行われました。 国内だけでなく、海外の学校への転入や海外企業への就職時にも活用されることが期待されています。
(抜粋: https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2020/10/26/201026-1.pdf)
02. ロイヤルメルボルン工科大学
● 国: オーストラリア
● 業種: 教育機関
● 概要: 通称RMIT、120年以上の歴史を持つオーストラリアを代表する大学
課題
1. 学割や図書館の利用など、学生ならではの特典を受けるために必要な身分証明書の発行に14日間待たなければならなかった。
2. 世界各国(約230か国)の学生が住む地域のGDPRやデータセキュリティ法をケアする必要があった。
解決方法 = "VCを使用してプロセスのデジタル化を実現"
卒業生と学生が多要素認証を使用してQRコードの発行・検証ができるアプリケーションを開発しました。COVID-19のパンデミックにより対面での事務作業を極力避けたいと望む学生にとって理想的なソリューションが実現されました。
結果
14日間かかっていた証明書の発行が数秒で完了 するようになりました。証明書を発行するのにかかっていた人的コストや紙資源などがなくなったことにより、大幅なコスト削減を実現できました。
(抜粋: https://condatis.com/case-studies/rmit-verifiable-credentials/)
03. アバナード社
● 国: アメリカ
● 業種: ITコンサルティング
● 概要: アクセンチュア社の子会社としてシアトルに本社を置くITコンサルティング企業
課題
1. プロジェクトの進行・担当者のアサインをスムーズに進めるために、誰がどのような資格を持っており、そのスキルは今も有効かどうか、トレーニングが必要かどうかを視覚化する必要があった。
2. 従来のID-PWモデルでは、ユーザーの情報管理は企業のサイバーセキュリティの強さに依存しており、従業員は自分のプライバシーを管理できないという問題があった。
解決方法 = "従業員が自分自身でプライバシーの管理ができるVCを採用"
VCを使用すると複数の組織のID管理システム間の接続(=フェデレーション)が不要になります。代わりに、ユーザーの手元の環境にはデジタル検証済みの資格情報が存在します。ユーザー名とパスワードという一般的な認証情報がなくても必要なシステムにログインできる仕組みが完成しました。
結果
課題となっていた社員の認定・スキル管理業務を改善することに成功しました。DIDを活用したシステムの導入により、アバナードの社員は認定試験へのアクセスから、合否の確認、企業による検証までのフローをID/PWなしで、モバイルデバイスを利用してシームレスに行うことができるようになりました。また、これまでは個人が持つ資格情報などのデータはすべて企業によって管理されていましたが、DIDを活用したシステムの導入により、データの共有範囲をユーザー側が指定できるように なりました。運用者と利用者の双方にとって大きなメリットをもたらすソリューションが実現されました。
04. Agilus Works Solutions社
● 国: カナダ
● 業種: 人材紹介業
● 概要: カナダ国内で最大級の人材・職業紹介事業社
課題
1. カナダの14の拠点でビジネスを展開するAgilus社では、数百のクライアントが採用を検討し、数千人のアクティブな候補者が常に新しい仕事を探している。採用担当者は、採用に適した人材が持つ資格情報の確認に膨大なコストと時間をかけており、情報を得るのに一人の候補者あたり数週間かかることもあった。
2. 求職者は働きたい企業の要件と自分が持つ資格を照らし合わせて、足りないスキルをすぐに認識できるようにしたいという要望があった。新しい雇用を創出する時間を業界全体で削減するために、足りないスキルの支援を行う専門家とのマッチングなどコミュニティ醸成の必要性があった。
解決方法 = "堅牢で安全な検証証跡が得られる情報技術であるVCを採用"
顧客に安心して長く使ってもらうために、システムは業界標準に則っている必要があります。ToIPやHyperledgerなどの技術も評価したものの、最終的には安全に検証証跡が得られるVCを選択しました。VCを使用することで、求職している候補者の プライバシーを保護 することにも繋がります。
結果
採用担当者はこれまで、候補者が希望する職種とのマッチングを確認するため、候補者ごとに資格やスキルを確認する必要があったが、その確認作業には電話や電子メールを活用していました。DIDを活用したシステムの導入により、電話や電子メールで候補者ごとに資格やスキルを確認することがなくなったという成果が得られました。結果として、候補者に関わる 書類作成時間が月あたり約4時間削減 されました。
05. イギリス政府教育省
● 国: イギリス
● 業種: 政府
● 概要: 児童福祉および教育分野を担当するイギリスの行政機関の一つ
課題
1. 学生は自分の獲得した資格情報を確認するのに最大4週間もかかっていた。
2. 教育技能資金提供機関(ESFA)が提供する資金援助のプログラムを活用したいタイミングで申請できないことが多く問題になっていた。
解決方法 = "データをユーザーの管理下におけるVCを採用"
学校が学籍番号で学生を管理することは利便性がある一方で、学校側が学生の情報にアクセスできてしまうことを指します。ユーザーのプライバシー保護を第一に重要視する教育省にとって、この仕組みはポリシーに反していました。VCを活用することでデータは匿名化され、学生は必要な情報のみを関係者に提示することができるようになります。またプロセスのデジタル化により、手続きの迅速化を実現できます。
結果
学生の資格情報が確認しやすくなったことにより、数週間かかっていた資金援助プログラムへの申請が数分で完了できるようになりました。資金援助プログラムだけでなく、講義に登録する作業や試験結果の確認作業の効率化にも繋がり、毎年200万人の新入生に対する検証時間を大幅に削減できます。本システムをイギリスの全ての大学に導入すると 3億ポンド(約480億円)のコスト削減 できるという試算も出ています。
さいごに
今回は世界各国のDID・VCの活用事例を紹介しました。事例を知ると理解が進んで、より興味が高まってきますよね!
今回事例をまとめてみて、DID・VCは主に プロセス迅速化 と コスト削減 に役立っているケースが多いことが分かりました。ただし本質的にはどの事例も ユーザーのデータはユーザー自身の管理下にあるべき という思想に基づいており、ユーザー体験がよくなることで関連する業務の負担軽減に繋がっているということが分かります。
日本がDID・VC先進国としてもっと効率的で便利な国になることを願っています!
参考文献
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今週の著者 → Mint
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